外国人社員に現場研修をさせてよいか—技人国の「実務研修」はどこまで?

「入社してすぐは、日本人の新卒と同じように店舗に出てもらいたい。外国人社員にそれをさせると、在留資格に問題が出ますか」——企業のご担当者から、よくいただくご相談です。

結論からお伝えすると、許されないわけではないです。入管は、日本の会社に入社後の実務研修という文化があることを知っていて、その必要性も理解しています。

 ただし、現場仕事を外国人にさせるのは、そのための在留資格が必要(技能実習、特定技能等)で、一般的には、それらの在留資格は取得が難しい(手間がかかる)在留資格になっています。そうすると、より取得が簡単な在留資格で現場仕事をさせているのではないか?との目線が審査する際にむけられる訳です。この記事では、技術・人文知識・国際業務でどこまでなら現場研修が認められるのかを、整理します。

【ざっくりいうと】

入管が止めたいのは、現場研修そのものではありません
「研修」という名目で、ずっと現場に置いておくことです。

目次

第1 まず結論——満たすべきは3つです

 条件つまずきやすいところ
日本人社員にも同じ研修があること外国人だけに設定されていると、原則として認められません
在留期間の大半を占めないこと「在留期間」は1回の許可の期間ではありません
研修後は本来の業務に移ること移ったことを、次の更新で確認されます

そしてもうひとつ、企業側が知っておくべきことがあります。研修期間があると、在留期間は原則1年。初回から3年・5年は見込みにくくなります(下記入管資料「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について(第4))

以下は、出入国在留管理庁が公表している「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について(2026年4月に最終改定)と、その別紙にもとづいています。
https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan69.html

第2 なぜ、現場研修が問題になるのか

1 技人国は「一定水準以上の業務」に限られています

「技術・人文知識・国際業務」——現場では技人国と呼ばれる在留資格は、学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的能力を必要とする業務に従事することを前提にしています。就労ビザのなかで、いちばん多く使われているものです。

求人の際の採用基準に「未経験可、すぐに慣れます。」と記載のあるような業務内容や、学歴・実務経験の要件を満たしていない日本人従業員が一般的に従事している業務内容は、対象となりません。

その仕事は、大学を出ていない人でもできるか。できるなら、技人国の枠には入りません。

店舗での接客、小売店の店頭での販売、工場のライン作業。これらは、この部分だけを取り出せば技人国に該当しない業務です。

2 現場研修は認められています

入管も、日本の会社に入社後の実務研修という慣行があることは分かっています。ガイドラインの別紙1は、こう書いています。

部分的に捉えれば技人国に該当しない活動であっても、それが日本人の大卒社員等に対しても同様に行われる実務研修の一環であって、在留期間中の活動を全体として捉えて、在留期間の大半を占めるようなものではないときは、その相当性を判断した上で、技人国の在留資格内で認めている——。

つまり、現場に出すこと自体は否定されていません。「一部」であり「一時」であることが求められているだけです。

なお、現場の仕事そのものを担ってもらうことが目的なのであれば、それは技人国で考える話ではありません。特定技能など、別の制度を検討することになります。

第3 3つの条件

 そうすると、認められる場合と、認められない場合はどう違うのか?が問題となります。結局は、研修の名を借りた現場仕事ではない、本来の意味での「研修」であること。を証明しなければなりませんが、実際の働く状況をでは、さまざまな職種、勤務形態、会社のシステム等いろいろな状況が考えられます。したがって、一概にこれというものが難しい側面があり、「総合的に判断」としかいえない面もあります。
 ただ、それでは審査が難しくなるので、条件が示されています。

1 日本人社員にも同じ研修があること

当該実務研修が外国人社員だけに設定されている場合や、日本人社員との差異が設けられているようなものは、合理的な理由がある場合を除き、相当性があるとは認められません。

「合理的な理由」として挙げられている例は、日本語研修を目的としたようなものです。日本語の習得のために期間を厚くする、といった説明は成り立ちます。けれども「外国人だから、まず現場を長めに」は理由になりません。

入管が提出を求めることがある資料も、公表されています。日本人社員を含めた入社後のキャリアステップと各段階の具体的な職務内容社内の組織図いま受け入れている技人国の外国人社員の勤務状況を示す資料。日本人と同じ扱いであることを、書面で見せてくださいということです。

2 在留期間の大半を占めないこと 「在留期間の大半」の数え方に注意

ここは誤解が多いところです。「在留期間」は、1回の許可で決まる期間のことではありません。

別紙1は、雇用契約書や研修計画などから読み取れる、その人が今後、技人国で日本に在留すると想定される期間の全体を指す、としています。

この違いが、具体的な結論を分けます。

雇い方実務研修取扱い
期間の定めなく、常勤の職員として雇用決定された在留期間「1年」を、まるごと研修に充てる公表資料は、これも想定されるとしています
雇用契約期間が3年のみ、更新の予定なし採用から2年間認められません

長く働いてもらう前提であれば、最初の1年を研修に充てても「大半」にはなりません。逆に、3年で終わる契約なら、2年の研修は明らかに大半を占めます。同じ2年でも、雇い方によって結論が変わるということです。

ひとつ目安があります。採用から1年を超える実務研修を予定する申請については、研修計画の提出を求めたうえで、その期間の合理性を審査する、と別紙1に書かれています。1年が、説明を求められる境目だと考えておくとよいでしょう。

3 研修後は、本来の業務に移ること

研修が終わったあと、技人国に該当する業務に移ることが前提です。そして、移ったかどうかは次の更新で確認されます(第5)。

なお、この取扱いは入社直後の研修に限りません。キャリアステップの一環として、契約期間の途中で実施される実務研修についても、同じように扱われます。数年目に現場へ戻す研修制度がある会社は、そちらも同じ物差しで見られます。

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第4 公表されている事例——3〜6か月は許可、2年は不許可

入管は、許可と不許可の具体例を公表しています。研修期間に注目して並べると、輪郭がはっきりします。

研修の内容期間結果
服飾会社の海外広報として採用。国内の複数の実店舗で販売・接客の実地研修。その後、本社で海外広報業務3か月許可
アニメ制作会社。入社当初、指導を受けながら背景の色付け等。その後、絵コンテの構成や原画作成といった主体的な創作活動6か月程度許可
ホテルの総合職(幹部候補生)。座学研修2か月+フロント・レストランでの接客研修4か月。その後、フロント業務や宿泊プランの企画立案計6か月許可
ホテルのフロント職として申請。提出資料から、採用後は専らレストランでの配膳や客室の清掃に従事する予定と判明2年不許可

不許可の理由として書かれているのは、技人国に該当しない業務が在留期間の大半を占めることとなるため。研修という名目そのものが否定されたわけではなく、長さで落ちています

許可された3件を見ると、いずれも研修のあとに何をするかが具体的です。「その後は本社で海外広報」「その後は原画作成」「その後は宿泊プランの企画立案」。研修が入口として位置づけられていて、出口が示されています。

ただし、これらはあくまで公表されている一例です。同じ期間なら必ず通る、というものではありません。業種、職務内容、社内の体制によって結論は変わります。

第5 在留期間は「1年」から始まります

企業側にとって、実務上いちばん影響が大きいのはここかもしれません。

実務研修期間が設けられている場合、研修修了後に技人国に該当する活動へ移行していることを確認する必要があるため、在留資格の決定時等には、原則として在留期間「1年」を決定することとなります。

在留期間そのものは、入管法施行規則が5年・3年・1年・3月のいずれかと定めています。そのどれを決定するかは審査の判断ですが、研修があると1年から、というのが公表されている原則です。「優秀な人材だから初回から5年で」とはいきにくい、ということになります。

別紙1は、こう続けます。在留期間の更新時に当初の予定を超えて実務研修に従事する場合、その事情を説明することになるが、合理的な理由がない場合、在留期間の更新が認められない。

つまり、研修が予定どおり終わらないと、更新で止まります。採用時に「1年で本配属」と説明して許可を得たなら、その約束は守っていただく必要があります。現場が忙しいから、もう半年——というのは、入管に対しては通らない理屈です。

更新をいつから申請できるかについては、在留期間はいつから申請できる?をご覧ください。

第6 研修が終わったあとも、見られています

本配属になったあと、現場の仕事にまったく触れてはいけないのか。そこまでではありません。

ガイドラインは、具体例を挙げています。フロント業務に従事している最中に団体客のチェックインがあり、急遽、宿泊客の荷物を部屋まで運搬することになった場合。こうした業務を行ったとしても、直ちに問題とされるものではない、と書かれています。

ただし、続きがあります。

結果的にこうした業務が在留における主たる活動になっていることが判明したような場合には、技人国に該当する活動を行っていないとして、在留期間更新を不許可とする等の措置がとられる可能性があります。

境目は「たまたま」か「常態」かにあります。手が足りないときに手伝うのは問題になりません。けれども、気がついたら毎日それをしている、という状態は、研修期間が終わったあとも同じ結論を招きます。

まとめ

  • 入社後の現場研修は、認められています。入管が公表している取扱いです
  • 条件は3つ。日本人社員にも同じ研修があること/在留期間の大半を占めないこと/研修後は本来の業務に移ること
  • 外国人社員だけに設定された研修は、合理的な理由がなければ認められません
  • 「在留期間」は1回の許可の期間ではなく、今後在留すると想定される期間の全体。だから雇い方で結論が変わります
  • 予定どおり研修が終わらないと、次の更新が認められないことがあります

あわせて読みたい

※ 本記事は、出入国在留管理庁が公表している「「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について」(令和8年4月最終改定)およびその別紙をもとに、一般的な情報としてまとめたものです。掲載した事例は公表されている一例であり、個々の事案の可否は個別の審査を経て判断されます。実際のお手続きの際は、申請先の入管または当事務所へご確認ください。


やさしい にほんご

これは やさしい 日本語(にほんご) の ページです。
上(うえ)の 文章(ぶんしょう)と 同(おな)じ 内容(ないよう)を、かんたんな 言葉(ことば)で 書(か)いて います。

この ページは 入社(にゅうしゃ)した あとの 研修(けんしゅう)の 話(はなし)です。
「会社(かいしゃ)に 入(はい)ったら、お店(みせ)や 工場(こうじょう)で 研修(けんしゅう)を すると 言(い)われた。これは 大丈夫(だいじょうぶ)ですか」に 答(こた)えます。

大丈夫(だいじょうぶ)です。でも 3つの ルールが あります

  1. 日本人(にほんじん)の 新人(しんじん)も、同(おな)じ 研修を する
  2. 研修が 長(なが)すぎない
  3. 研修の あと、本当(ほんとう)の 仕事に 変(か)わる

なぜ ルールが あるのですか

あなたの ビザ(技術・人文知識・国際業務)は、勉強(べんきょう)した ことを 使(つか)う 仕事の ための ビザです。

お店の 接客(せっきゃく)、お店で 物(もの)を 売(う)る 仕事、工場の ライン。
これは この ビザの 仕事では ありません

でも 日本の 会社は、新人に まず 現場(げんば)を 見(み)せる ことが 多(おお)いです。
入管(にゅうかん)も それを 知(し)って います。
だから 少(すこ)しの あいだ なら いい、と 決(き)めて います。

1 日本人の 新人も 同じか

いちばん 大切(たいせつ)な ルールです。

外国人(がいこくじん)だけ 研修が ある
外国人だけ 研修が 長い
これは だめです。

ただし、日本語の 勉強の ためなら、理由(りゆう)に なります。

2 研修は どのくらいまで いいですか

入管が 出(だ)して いる 例(れい)です。

研修の 長さけっか
3か月(お店で 販売・接客)OK
6か月(アニメ会社で 色(いろ)を つける)OK
6か月(ホテルで 座学2か月+接客4か月)OK
2年(ホテルで ずっと 配膳(はいぜん)と そうじ)だめ

1年を こえる とき、会社は 研修の 計画(けいかく)の 紙(かみ)を 入管に 出します。

「長い」か どうかは、人(ひと)に よって ちがいます

ずっと 働(はたら)く 契約(けいやく)の 人 … 最初(さいしょ)の 1年 ぜんぶ 研修でも いい ことが あります。

3年だけの 契約の 人 … 2年の 研修は だめです。
3年の うち 2年は、長すぎるからです。

3 ビザは 「1年」に なります

研修が ある とき、ビザは たいてい 1年です。
ビザは 5年・3年・1年・3か月の どれかですが、研修が ある 人は 1年からに なります。

1年 あとに、入管が もう 一度(いちど) 見ます
「研修は おわりましたか」「今(いま)は 本当の 仕事を して いますか」

まだ 研修が つづいて いて、いい 理由が ない とき。
ビザの 更新(こうしん)が できない ことが あります。

研修が おわった あとは

ときどき 現場を 手伝(てつだ)う のは、問題(もんだい)に なりません。
いそがしい とき、お客(きゃく)さんの にもつを 運(はこ)ぶ。これは 大丈夫です。

でも、まいにち それを して いる とき。
「本当の 仕事を して いない」と 見(み)られて、更新が できない ことが あります。

心配(しんぱい)な とき

「研修が 長い かも しれない」
「日本人の 新人は 現場に 行(い)って いない」

こう 思(おも)った とき、1年 待(ま)たないで ください。
更新の 前(まえ)に 相談(そうだん)する ほうが、できる ことが 多いです。

投稿者プロフィール

山脇 俊明
山脇 俊明

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