在留資格という言葉は、入管手続きのあらゆる場面で登場します。もっとも、その制度がなぜ存在するのか、どのような性質のものなのかが説明されることは、あまり多くありません。この記事では、在留資格制度の根拠と、その性質を順に整理します。
第1 在留資格とは、日本にいる「資格」である
1 審査を経ずに入国できる国は存在しない
現在、何の審査も国家による管理も受けずに入国できる国は、基本的に存在しません。国境を越えて他国へ入るには、その国の定めた手続きを経る必要があります。
では、なぜ外国へは自由に立ち入ることが許されないのでしょうか。出発点は、国家が主権を有しているという点にあります。
2 国家には主権があり、主権には排他性がある
国家には主権があります。そして主権には排他性という性質があります。すなわち、自国の領域内における事柄は、他国の干渉を受けることなく、当該国家が自ら決定することができます。
誰を自国の領域内に受け入れるかという判断も、この主権の作用に含まれます。
3 外国人は自由には入国できない——国際慣習法
主権の排他性から、次のことが導かれます。特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、また受け入れる場合にどのような条件を付するかは、当該国家が自由に決定することができます。
これは日本が独自に主張する立場ではなく、国際慣習法として共有されている理解です。各国が自国の法令で外国人の入国と在留の条件を定めているのは、この理解を前提としています。
4 マクリーン事件判決
この点について、最高裁判所が明示的に述べたものとして、マクリーン事件判決があります(最高裁昭和50年(行ツ)第120号 昭和53年10月4日大法廷判決 民集32巻7号1223頁)。在留期間の更新を許可されなかった外国人が、当該不許可処分の取消しを求めた事件です。
国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく、特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、また、これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを、当該国家が自由に決定することができるものとされている
最高裁昭和53年10月4日大法廷判決(民集32巻7号1223頁)
同判決は、この理解を前提として、外国人には日本に入国する自由が憲法上保障されていないこと、および引き続き在留することを要求しうる権利も保障されていないことを述べています。憲法22条1項が保障する居住・移転の自由は、外国人の入国の自由までを含むものではないという理解です。
そして在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるかどうかの判断については、法務大臣に広範な裁量が認められるとしています。
もっとも、同判決は、憲法第3章の基本的人権の保障が、権利の性質上日本国民のみを対象とすると解されるものを除き、日本に在留する外国人にも等しく及ぶことも述べています。あわせて、裁量権の行使であっても、判断が事実の基礎を欠く場合や社会通念上著しく妥当性を欠く場合には、裁量権の逸脱・濫用として違法となり得ます。広範な裁量が認められることと、裁量が無制限であることとは、区別して理解する必要があります。
5 その内容を定めたものが「在留資格」である
以上の理解を前提として、日本は、外国人を受け入れる際に付する条件を法令で定めています。その条件を類型化したものが在留資格です。
入管法(出入国管理及び難民認定法)は、日本に在留する外国人は、同法その他の法律に特別の規定がある場合を除き、上陸許可等に際して決定された在留資格をもって在留するものとしています(入管法2条の2第1項)。在留資格の種類は、同法の別表第一および別表第二に掲げられています(同条2項)。
また、在留資格ごとに在留期間が定められ、外交・公用・高度専門職(別表第一に掲げるものに限る)・永住者を除き、在留期間は5年を超えることができません(同条3項)。
第2 在留資格の性質
1 一在留一在留資格
在留資格は、一人の外国人につき一つです。複数の在留資格を同時に有することはできません。これを一在留一在留資格といいます。
この原則から、次のことが導かれます。
第一に、在留資格の変更は、資格の追加ではなく資格の交替です(入管法20条)。変更が許可されれば従前の在留資格は失われ、不許可であれば従前の在留資格のままとなります。複数の在留資格を並行して確保しておくことはできません。
第二に、複数の在留資格の要件を同時に満たす状況にある場合には、いずれの在留資格によるかを選択する必要が生じます。就労系の在留資格を有する外国人が日本人と婚姻した場合などがこれにあたります。
第三に、本来の在留資格に属さない活動を行う必要がある場合には、在留資格を追加するのではなく、別の制度によることになります。資格外活動の許可(入管法19条2項)がこれにあたります。
2 在留資格は日本で行う活動と結びついている
外国人が日本に在留するためには、いずれかの在留資格を有していなければなりません(入管法2条の2第1項)。そして別表第一の在留資格については、当該在留資格に応じ、同表の下欄に掲げる活動を行うことができるものとされています(同条2項)。
とすると、別表第一の在留資格をもって日本に在留する外国人は、当該在留資格に定められた活動を行っている必要があるということになります。在留資格は「日本に在留してよい」という許可ではなく、「当該活動を行う者として在留してよい」という許可です。
入管法19条1項は、別表第一の在留資格をもって在留する者が、当該在留資格に応じた活動の範囲を超えて、収入を伴う事業を運営する活動または報酬を受ける活動を行ってはならないとしています。範囲外の活動を行うには、同条2項の資格外活動の許可を受ける必要があります。
この構造から、活動の実態が在留資格と対応しなくなった場合には、在留資格の変更(入管法20条)が問題となります。また在留期間の満了に際しては、更新(同法21条)において、当該活動が継続しているかが審査の対象となります。
3 活動に着目しない在留資格——身分系
もっとも、着目点が特定の活動ではなく、その者の日本との関係、あるいは日本人との関係にある在留資格があります。別表第二に掲げられた次の4つです。
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
入管法2条の2第2項は、別表第二の在留資格について、同表の下欄に掲げる身分または地位を有する者としての活動を行うことができるとしています。定められた活動を行うことが要件となっているのではなく、当該身分または地位にあることが要件となっている、という構造です。
したがって、別表第二の在留資格には、活動の内容による制限がありません。入管法19条1項の規律の対象も、別表第一の在留資格をもって在留する者に限られています。これが、身分系の在留資格において就労の内容が制限されない理由です。
他方で、要件が身分または地位に置かれているため、当該身分または地位が失われた場合には、在留資格の前提が失われます。活動の内容に変化がなくとも、婚姻関係の解消などにより在留資格が問題となるのは、この構造によるものです。
4 整理
| 別表第一(活動系) | 別表第二(身分系) | |
|---|---|---|
| 要件の着目点 | 日本で行う活動 | 日本または日本人との関係にもとづく身分・地位 |
| 活動の制限 | 在留資格に応じた範囲に限られる(入管法19条1項) | 活動の内容による制限はない |
| 範囲外の活動 | 資格外活動の許可が必要(同条2項) | — |
| 前提が失われる場面 | 当該活動を行わなくなったとき | 当該身分・地位を失ったとき |
在留資格の各類型は、別表第一が一から五までに区分され、別表第二に4つが掲げられています。永住者については、在留期間の定めがなく(入管法2条の2第3項)、その取得は永住許可(同法22条)によります。
※ 本記事は制度の根拠と性質を整理したものです。条文および判例の内容は要旨としてまとめた部分を含みます。在留資格の類型および要件は法改正により変更されることがあります。
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