総論
2026年7月、法務省が第二次出入国在留管理基本計画を公表しました(出入国在留管理庁「出入国在留管理基本計画」)。ここでは、今後施策の変化を展望するという意味で、「今後の方針」を中心に見ていきます。(永住、経営・管理の部分は省略しています。)あくまで方針ですので、今後具体的にどうなるかはまだよくわからない部分も多いです。
6つの方針
- 厳格かつ円滑な出入国管理の実現
- 外国人の適正な在留管理の実現
- 外国人との秩序ある共生社会の実現に向けた外国人の受け入れ環境整備
- 安心安全な社会の実現に向けた不法滞在者対策等の推進
- 難民や補完的保護対象者等の適正かつ迅速な保護・支援の推進
- その他
第1 出入国管理の課題は、厳格化と円滑化の両立に置かれている
電子渡航認証制度(JESTA)の導入
本制度が導入されると、<中略>短期滞在者の認証を受けている者は、所要の審査を受けた後、ウォークスルー型ゲートを通過して上陸することが可能となる。
政府目標は「2030年に訪日外国人旅行者数6000万人」とされており、スピーディーに入国審査をしつつ、審査の厳格性も落とさずに運営していきたいようです。
導入は2028年度中を目指すとされています。
デジタル技術のさらなる活用
JESTAを導入した後は、短期滞在者の入国から出国までを一元的に管理して、活用するようです。一元化が具体的に何を指すのかわかりませんが、情報をデジタルで記録して、検索や閲覧が瞬時に情報の漏れなく活用できるシステムを作っていくイメージでしょうか。
第2 外国人の適正な在留管理の実現 ー 在留管理の課題は実態把握
在留管理DXの推進
公共サービスメッシュを活用したマイナンバーによる情報連携(2027年から運用開始予定)
※ 公共サービスメッシュとは、行政が持つデータの活用・連携を迅速にするための情報連携基盤のこと
https://www.digital.go.jp/policies/public_service_mesh
これにより、出入国在留管理庁が関係機関から国民健康保険料及び国民年金保険料の納付情報、地方税の課税情報、医療保険被保険者等資格情報等の提供を受け、出入国在留管理庁が関係機関に対して、国籍、在留資格情報、出入国関連情報等を提供することとなるが、今後、地方税の納税情報の関係機関から出入国在留管理庁への提供、生活保護等に関して出入国在留管理庁から関係機関への国籍、在留資格情報等の提供を検討し、在留管理の高度化を図る。
併せて、国税については、納税情報等の連携により、地方税については、公共サービスメッシュを活用した、マイナンバーによる納税情報の連携等により、上陸審査(再入国許可を受けている者に対する上陸審査を除く。)及び在留審査や未納がある場合の納付勧奨に活用する仕組みを検討し、納税義務の履行確保への協力や適切な在留管理の実現を図る。
現段階では具体的にどこまでかは未定のようですが、税金や社会保険料などは入管側がすぐに確認できる状態になるようにしていくようです。
- 在留申請は原則オンライン
- 手数料はキャッシュレス決済導入
在留管理の一層の適正化・実態把握の強化
在留管理の一層の適正化に当たっては、制度設計においても、個別の在留審査においても、外国人や所属機関等に係る的確な実態把握・分析を行うことが不可欠の前提となる。的確な実態の把握・分析を行うためには、どのような情報が必要かを精査した上で、地方公共団体等との連携を強化しつつ、出入国在留管理庁に当該情報が送付される仕組みの構築を検討していく。また、その手法については在留資格に応じて変わり得るが、事業所に対する実態調査といった直接的な情報収集手段の強化も含めた取組を行うことにより、得られたエビデンスに基づき時代に即した在留管理の適正化を実現していく。
やはり、現実には隠れた形で外国人の活動がおこなわれると、それを正確に把握するのはかなり難しいようです。「実態の把握」という言葉が全体で繰返し出てきます。「直接的な情報収集手段の強化」ということは、事業所に対して、行政の職員が直接行って確認するということでしょうか。
「特に」とされて、いわゆる技人国と留学生の問題が指摘されます。
特に、在留資格「技術・人文知識・国際業務」及び留学生の資格外活動許可に関し制度趣旨と実態に乖離がみられる問題については、現行法の枠組みの中で実態を把握した上で、所属している者の活動の適切な把握や責任・指導の在り方も含め、受入れ機関において外国人が本来行うべき活動に従事することを確保する方策に関し、必要な措置を講じる。
技人国と留学生の受入機関ということは、雇用先の企業や学校等に外国人の管理をしっかりやってもらいます。というニュアンスでしょうか。
さらに、具体的な話に入っていきます。
例えば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」については、従事可能な業務範囲に係る案内の充実を含めた在留審査等に係る運用の改善に取り組む。留学生については、外国人雇用状況届出を活用し、複数の稼働先で資格外活動を行っている者を特定するなどして、教育機関と連携した実態把握や指導を行う運用を2026年4月から開始しており、今後は、マイナンバーによる情報連携に合わせて所得情報を活用することで、より的確かつ厳格な審査の実施を検討し、必要な措置を講じるほか、資格外活動許可及びその管理の在り方について、実態等を踏まえた検討及び必要に応じた見直しを行う。また、我が国において違法行為を行った者に対する在留審査を厳格化する。その上で、更なる取組が必要である場合には、法令上の措置をとることも検討する。
技人国は、実際には現場の仕事をしている場合があり、これが問題となっていますが、「従事可能な業務範囲に係る案内の充実」というのは、その前の部分で受入れ機関に対する指摘があって、「例えば」なので、受入機関に対して「技人国の人には、こういう仕事しかさせられませんよ」と案内をしていく、ということでしょうか。
この案内を含めた(他にもあるということですね)、在留審査等に係る運営の改善に取組む。ということなので、想定される場面は、在留申請をするときのようです。
留学生の資格外活動では、マイナンバーでどれぐらい稼いでいるかをチェックして「厳格な審査」をする。そして、制度そのものの見直しも視野に入っているとのことです。このあたりは何となく力が入っているように感じます。
特定技能については、
在留諸申請の審査においては、標準処理期間内の処理を励行するとともに、より厳正な審査に向け、特定技能評価試験等の合格証明書の偽変造防止のための更なる措置を講じていく。
合格証明書の偽造等について、わざわざ指摘があるということは、数として増えているのでしょうか。
上陸許可基準の見直しの検討
高度専門職は、制度の複雑化が課題とされています。これに対する方針の記述は具体的です。
在留資格「高度専門職」等については、その制度目的を達成するため、受入れによる我が国の産業、労働市場の発展・効率性向上への影響等を検証した上で、当該在留資格のポイント加算項目等について、その制度趣旨に沿った人材を認定するための指標としての妥当性や関係政策との整合性、人材獲得を促進するルートや企業・業界のニーズ、項目の活用実態も踏まえつつ、年収基準等や項目自体の内容、配点やその比重も含めて必要な見直しを行う。
配点の調整にとどまらず、項目の内容自体を見直すとされています。「必要な場合には」などの表現がないので、基本的には見直しをするということだと思います
育成就労制度の運用開始に向けた準備
特定在留カード等の運用開始
特定在留カード等は、在留カード等とマイナンバーカードを一体化したもので、2026年6月に運用を開始しています。計画には、これに続けて次の記述があります。
今後は、全ての在留外国人が原則として特定在留カード等を取得するための方策として、オンライン申請へのシステム改修の対応等を検討する。併せて、受入れ機関(所属機関、学校等)の責務において受け入れた外国人にマイナンバーカードを取得させる取組についても検討し、受入れ機関に属さない在留資格をもって在留する外国人についても、同様にマイナンバーカードを取得するための取組について検討した上で、必要な取組を行っていく。
受入れ機関に新たな役割が生じる可能性があります。1で述べた情報連携は、マイナンバーカードが広く普及して初めて機能するため、特定在留カードの取得促進はその前提にあたります。
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※ 本記事は、法務省が2026年7月に策定した第二次出入国在留管理基本計画の本文をもとに、一般的な情報としてまとめたものです。囲みの中は同計画本文からの引用で、ページ数は同計画の表示に従いました。強調は当事務所によるものです。計画は不法滞在者対策と難民等の保護についても定めていますが、本記事では取り上げていません。また、計画に記載された施策には、実施が決まっているものと検討段階のものがあります。実際のお手続きの際は、申請先の入管、または当事務所の就労ビザのページをご確認ください。
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